「喜んで納税したい」-外国人経営者が語る日本への感謝と税理士の役割
2025年11月1日発行の「北海道税理士会報」に国際委員会委員としてコラムを寄稿しました。北海道税理士会から転載の許諾をいただきましたので本ページに全文を掲載します。

外国人が長期間日本に滞在して仕事をするためには、原則として在留資格が必要です。
私が外国人のクライアントの依頼を受ける時は、最初にこの在留資格を確認します。
なぜなら、外国人経営者がどんなに素晴らしい人物であっても、どんなに素晴らしいビジネスプランを思い描いていても、適切な在留資格がなければ何もできないからです。許可なく商売を始めてしまうのは違法行為です。したがって、税理士は事業計画策定の段階から、在留資格の要件を満たせるよう、ビザを専門とする行政書士など他の専門家と連携しつつ、適切な助言を行う責任があると考えています。
この在留資格を審査、許可をしている出入国在留管理庁のホームページには、「問題のない外国人について円滑な出入国審査を実施するとともに、日本国民の生命と安全を守るため、テロリストや犯罪者などの外国人については、厳格な出入国審査を実施し、その入国を確実に阻止することが必要です。当庁においては、入国審査官による日々の入国審査を通じて、デジタル技術を活用したり情報分析を強化しつつ、円滑かつ厳格な出入国審査を実施するべく取り組んでいます。」と記載されています。

北海道内の総人口は毎年減少していますが、在留外国人の数は2014年から2024年の10年間で、2.9倍に増加(グラフ参照)しました。異なるバックグラウンドを相互に理解し、協力して北海道を盛り上げていくことが、今後益々重要になってくると思います。
さて、外国人が日本国内で起業するためには、日本人配偶者がいる「配偶者ビザ」、あるいは、素行が善良で、安定した収入や生活能力があり、日本で永住することが日本にとってプラスになると認められる人が取得できる「永住権」がある人々を除いては、必ず「経営管理ビザ」が必要です。
従来、新規で経営管理ビザを取得するためには、「資本金5百万円以上」または、「常勤職員2名以上の雇用」が必要でしたが、本稿執筆の9月末時点の情報では、2025年10月中旬を目途に、「資本金3千万円かつ常勤職員1名の雇用」が必要になるなど、在留資格の要件に関する見直しが行われると報じられています。これが実現すると、外国人が法人経営をスタートするためのハードルは格段に高くなり、事業計画の段階からより精緻な収益性・安定性の証明が求められるようになるでしょう。
また、以前から外国籍の方が日本国内の銀行口座を開設することは簡単ではありませんでしたが、昨今はマネーロンダリング対策の影響か、更に難しくなっているように感じます。
私としては、これらの高いハードルをクリアして起業される外国人の方々を、日本人起業家と同じように、これからもバックアップして参りたいと思います。
最後に、かつて私が外国人クライアントに、納税額がかなり高額になることをお伝えしたときに、返ってきた回答を以下にご紹介します。
A氏「私の子供は小学生の時、私の母国から日本に来て、全く日本語が話せなかった。地元の公立小学校の先生たちが、本当に手厚く子供を見守ってくれたおかげで、子供は元気に学校に通い、卒業することができた。私はそのことに心底感謝しているので、喜んで納税したい。」
B氏「私たちは、コロナ禍の直前に日本で法人を設立したが、設立後数年は、全く売上が立たなかった。そのとき私たちはコロナの助成金を申請して、日本政府はそれを払ってくれた。私たちは日本政府に助けられたので、コロナが終わったら、売上と利益を伸ばして納税して、日本政府に恩返しがしたいと考えていたので、今年は納税できてよかった。」
C氏「私は子供の頃から、父親に、納税することは良いことだと言われて育った。だから納税は良いことだと思っているので、先生(税理士)が計算してくれた金額をきちんと払いたい。」
彼らは色々な不自由を感じながらも、「日本が好きで日本に住みたいから、ルールを守って納税したい」という、私の自慢のクライアントです。
これからも、「日本が好き!」と言ってくれる外国人の方々を、精いっぱいサポートして参りたいと思います。
高橋敏子

