外国人のための無料専門家相談会 レポート
2024年8月1日発行の「北海道税理士会報」に国際委員会委員としてコラムを寄稿しました。北海道税理士会から転載の許諾をいただきましたので本ページに全文を掲載します。
札幌市時計台の向かい側にあるビルの3階に、公益財団法人札幌国際プラザ(以下、国際プラザ)があります。ここで2ヶ月に1度、「外国人のための無料専門家相談会」が開催されます。私は5年ほど前から年に何回か、相談員としてこの相談会に参加しています。今日はその相談会の様子をご紹介します。
この相談会には税理士のほか、弁護士、行政書士、社会保険労務士が相談員として参加します。
相談者は国際プラザでの事前予約が必要です。
国際プラザの方は予約に基づいて、当日までに一覧表(相談者の国籍、言語、相談内容、時間、「来場(対面)または、オンライン(zoom)」)を作成し、相談員はその一覧表を元に担当を決めます。
相談は1件あたり30分ですが、相談ごとに時間の長短があり、また、他士業の相談ブースに呼ばれることもありますので、当日参加の税理士同士で臨機応変に対応します。
相談者は、法律の専門家に相談を希望する外国人ですが、国籍は、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、中東、アメリカ、アフリカと、実に様々です。一覧表の中に珍しい国名があるとワクワクします。
言語は、相談者が日本語OKの場合もあれば、英語など他の言語での対応を希望される場合もあります。
英語、中国語が堪能な先生方は、通訳無しで対応されていますが、私の英語は日常会話レベルなので通訳の同席を希望しています。ただし通訳が不足していたり、相談が始まって話し始めてみると、相談者も日本語が少しできるケースもありますので、そういうときは日本語と英語のちゃんぽんか、スマートフォンでわからない単語を調べたりしながら対応することもあります。
相談内容は「大学からもらった奨学金の確定申告が必要か(奨学金の種類により異なります。)」、「送金課税」、「複数の仕事(結婚式場の牧師!英会話講師等)をかけもちしている場合の確定申告の方法」、「母国にある財産が相続税の課税対象になるか」、「住民税の減額ができないか」など多岐にわたります。
また、個人事業の開業、会社設立のご相談もあります。これは、税務相談の前に、ビザ(在留資格)を確認しなければならない、要注意の質問です。
外国人が日本で働くためには、何はさておきビザの問題をクリアする必要があります。ビザを無視して仕事をすると、不法就労となることがありますので、たとえ本人が税務相談を希望されていても、まずは行政書士の先生に同席をお願いして一緒に対応します。
相談時間終了後は相談員が集まって、当日対応した相談内容を発表し、意見交換する時間が設けられていて、私はこの時間をとても楽しみにしています。
弁護士は、離婚、親権、労働問題、交通事故、行政書士はビザ、民泊、許認可関係、社労士は労務、社会保険と、相談内容が幅広く、また、同じ案件でも他士業からみると、その事案の切り口や見方が異なることを知る機会も多く、大変興味深いです。
世界に数ある国の中から、日本を、しかも北海道を選んで来てくれた外国人の方々に、少しでも「日本は良い国だった。北海道はいいところだった。」と思って頂けるように、これからも研鑽を積み、相談員として参加したいと思っています。
(外国人の税務の相談員に関心を持ってくださった先生は、北海道税理士会まで、どうぞご連絡ください。)
高橋敏子